第55回コンソーシアム人材セミナー 開催報告

平成30年5月22日(火) 、第55回コンソーシアム人材セミナー「福島原発の廃炉に向けて 中外テクノスの専門・技術サービス/ 中外テクノス株式会社 原子力保全システム開発部 企画室課長 技術士(機械部門) 小林 強志 氏による講演」を開催しました(参加者41名)。

概要

 中外テクノス株式会社は、分析、調査、計測、ものづくりの技術を提供することで、各産業が抱える問題の解決に努めている企業です。数ある業務の中で、原子力関連の業務は約25年の実績があります。小林さんは広島大学工学部第一類を卒業後、原子力関連の取り組みに携わってきました。
今回の講演では、東日本大震災によって事故の起こった、福島第一原子力発電所の廃炉についてお話がありました。廃炉とは、原子炉から溶け落ちてしまった放射性物質(燃料デブリ)を安全に取り出し、保管したうえで、原子炉を解体するまでの一連の作業を指します。その中で中外テクノスの主な取り組みとしては、燃料デブリの取り出しを行っています。
 これまでは、人が被ばくの危険を冒してまで燃料デブリの排除を行っていました。しかし、中外テクノスでは暗い原子炉内を映し出すカメラを設置し、さらにスコップなどで障害物を撤去し、燃料デブリを破砕・回収することが可能なロボットを開発することで、廃炉を安全に行っていこうとしています。
 そうした仕事で求められる人材は、物事を考えられる人です。自分で課題を見つけて主体的に動ける能力は、研究者やその他の職業全てで求められる能力です。小林さんのような熟練した技術者であっても、常に壁にぶつかり続けておられるそうです。そのように一生懸命に壁にぶつかっていける根本には、福島の人々が核の危険にさらされずに普通に生活できるようになってほしいという思いがあるからだと、小林さんは考えています。では、自分たちにとって研究の原動力となるもの、大切にしているものは何なのか、考えさせられました。

参加した学生から参加者の感想(一部)

(1) 講師が所属する企業・組織の経営理念や活動内容などについて、「共感」した点

  • 震災によって起こった大事故により、原発または科学技術に対する不信感が国民全体に浸透したと思います。これからの技術において最も求められるのは安全であることへの安心感であり、中外テクノス様がそれを第一に考えていることに共感しました。
  • 過酷環境下で働く人の安全を守るために技術を開発できるという所に仕事のやりがいを感じました。社会で必要とされるものは、新しいニーズに応えることができる事だと思うのですが、答えの無いものに向かって研究を行う研究者はすごいと感じました。
  • 廃炉というものは難しいものであるため、有識者や大学の研究者等が一体となって取り組んでいく必要がある。また求められる人材については講師の仰るとおりだと思いました。
  • 人々の普段の生活を根っことして、それらに関わる産業が抱える問題を研究・技術によって、解決するという方針は良いなあと思いました。
  • 各産業が抱える問題に対して分析・調査・計測・モノづくりの技術を提供することにより、お客様と共に解決を目指す専門技術サービス業」に共感しました。

 
(2) 講演やディスカッション内容に関する感想・印象に残ったこと

  • 原発についての技術的な話から研究者・技術者について、今後の進路についてのアドバイス、企業と人との関わりなど、多様な観点からのお話を聴くことができて良かったです。
  • 廃炉と言う過酷環境下で燃料デブリを取り出す補助をするロボットは一般的なものではなく、あらゆる状況に対応する必要があると思いました。またそれを作るために貴社の社員の方々も、現場の状況を確認する必要があると考えると大変な仕事であると思いました。
  • キャリアデザインの上で、自分の原動力となるものについて考え、掘り下げることも重要というお話は心に響きました。
  • 福島原発の廃炉については様々な分野の技術が必要で、未知な部分も多く、多様な機関や企業の協力が必要なことが課題の一つだと思いました。