第37回コンソーシアム人材セミナー 開催報告

 平成29年5月10日(水),第37回コンソーシアム人材セミナー「日東電工株式会社専務執行役員CIO 経営インフラ統括部門長 表 利彦 氏による講演」を開催し,広島大学からは34名,テレビ会議システムで中継した徳島大学からは17名の学生・教職員が参加しました
 セミナーは「将来の多軸創出のために-Nittoの文化,戦略,人財育成-」と題して行なわれました。
 主な内容としては,まず,成長戦略として,「三新活動」,「グローバルニッチトップTMとエリアニッチトップTM戦略」,基盤事業文化と新規事業文化の融合の促進ができる人間である「Nitto Person」などの説明がありました。
 次に,将来価値を生むための技術マネージメントとして,「差別化のマネージメント(差別化曲線)」(※1),上限規格品(※2)ではなく,環境・エネルギー・省エネ商品などの無限規格品(※3)の開発による「製品サイクルの短寿命化の回避」,市場が成熟した段階では,市場のシェアー拡大ではなく,顧客のシェアー拡大(同じお客様に何回選んでいただけるか)を目指す「バリューチェーンを広げるマネージメント」などの説明がありました。
 さらに,多様性はイノベーションの源泉として,研究開発思考において企業では技術や工学だけでなく科学への興味を持つ人材が必要であり,イノベーションを創出する仕組みとして,「技術者の砂場マネジメント」等のみんなで輝いていく環境などの構築,さらには「色々な強みを持つ人材の把握してのチーム作り」や「人材から人財へ」と仕事力,気力・提案力を引き上げる働きかけが重要であるとの説明がありました。
 最後に,グローバル化が一般化した現在では,日本発世界展開という考え方ではなく,最初から目的が決まっているのであれば,最初からグローバルを持ったチームを編成し,専門性を高めた人を加えてを作りスピーディに進んていくことが重要であり,学生に対してはまず専門性となる強みを作るように,そして自分の強みを徹底的に伸ばしながら世の中に貢献していく進路を考えていってほしいとのメッセージがありました。

(注)「グローバルニッチトップ」と「エリアニッチトップ」は日東電工株式会社の登録商標です。
​(※1)差別化曲線:製品を開発しても数年後には成熟化して競合先が追い付いて来る。対応策として,基盤技術を基に新たな製品を派生させたり,別用途に応用できるようにすれば,常に競合先と差別化して勝つことができることを示す曲線。
(※2)上限規格品:競合他社に製品性能が追いつかれ頭打ちになる製品
(※3)無限規格品:スポーツの世界記録のように性能面で限界がなく,頑張れば競合他社と差別化し勝てる製品

また,参加した学生から参加者の感想の一部を掲載します。

〇 自分の専門分野とは異なる視点や企業の価値観からのお話しが非常に面白く感じました。特に「これはすごい!」と思ったのは,差別化曲線※についてのお話しです。私は現在の研究を進める上で,「全く新しい事実を発見しようにも,結果につながるまでの過程が長すぎては他の研究者に負けてしまう」と悩むことがあります。しかし,別用途で求められる可能性についても併せて考えるという発想に驚かされました。(生物圏科学研究科 女性)

〇 大学にいるだけだと企業とは何か,どう利益をあげるかというところに触れる機会が少ないが,この講義では戦略なども具体的に説明してくださり,自分のキャリアを考える上で重視する事を学べた。特に,生き残っていくにはどうするか,研究をどう進めていくかなど,自分の研究を進めていく上でも考えて行かなければならないものであった。講義でも話されていたように,自分の専門の強みはもちろんであるが,多分野への興味,政治・経済も考え,社会で活躍していきたいと感じる講義であった。(工学研究科 男性)

〇 独自の誇れる技術を持ち,海外や他の企業とも連携をとった大規模な事業を展開している,日東電工さんの経営理念について話が聞けた点が非常に有意義でした。経済学部生でも学ぶ点が非常に多いセミナーだったように思います。基軸とする理念を全社員で共有しながらも,他社の技術の優れた部分を取り入れたり意見を交わしあったりと多様性を大事に,柔軟な経営理念がある素晴らしい会社だとビデオを見て感じました。自分自身,長所と思う部分をしっかり磨いて就職活動へ挑もう思います。(経済学部 男性)

〇 今まで企業戦略について詳しく知らずにいたので,今回のお話しは新鮮で面白かったです。差別化ポジションの維持の話しでは,上限規格品※ではなく無限規格品※を目指すと伺い,なるほどと思いました。多分野にも興味を持つ,専門性を磨く等勉強になりました。(先端物質科学研究科 女性)

〇 お話しの内容が分かりやすくとても勉強になりました。専門性・分野が違う内容でもとても伝わりました。またディスカッションは色々な人の強みを聞く事で,新しく強みに気付いた。(生物圏科学研究科 男性)